ヘルンフートのクリスマスの星

· クリスマス

 クリスマスに備えるアドベントの季節を迎えようとするこの時、ルーテル田園調布教会の玄関前、そして礼拝堂の入口に、トゲトゲの星が飾られました。

 この星はドイツ語圏では「ヘルンフートの星」(Herrnhuterstern)あるいは英語圏では「モラビアの星」(Moravian star)と呼ばれているクリスマスの飾りです。この「ヘルンフートの星」は、ドイツのヘルンフート兄弟団(英語圏ではモラビア兄弟団とも)が、クリスマスの星飾りとして用い始めたと言われています。

 ヘルンフート兄弟団(Herrnhuter Brüdergemeine)は、"Die Losungen"=「日々のみことば」(聖書日課)と呼ばれるものを最初に作ったグループとされています。この人々は元来はチェコのモラビア(モラヴァ)と呼ばれる地域にいた様々なプロテスタントの信者たちでしたが、18世紀の初頭、その領主がプロテスタントの信仰を認めなかったために故郷を追われ、ツィンツェンドルフ伯爵の領地へと逃げ込み、そこで「主の守り」(ヘルンフート=Herrnhut)と呼ばれる信仰共同体を形成したのでした。ピエティスムス、敬虔主義に根ざしたその信仰運動は、プロテスタントとしては初めての海外伝道を担うこととなります。

 宣教師らが世界各地に派遣されるにあたって、その子ども達はヘルンフートの寄宿舎に残って教育を受けることとなります。やがて19世紀の初頭に、この寄宿舎の創立50周年を顕現日に祝うこととなった時、このヘルンフートの星が初めて飾られることとなったのでした。四方八方に広がったその星の突起は、福音(=良い知らせ)の光が世界に広がっていく様を表したものでした。やがてアドベントの期間に、寄宿舎の子ども達が一緒にこの星を作り、主イエスの誕生の様子を伝える人形(クリッペ)と共に飾られるようになります。アドベントからクリスマスにいたる季節のこうした暖かな思い出は、両親と離れて暮らさなければならない寂しさを耐える子ども達のその心を照らす光となりました。そしてやがて成長してその寄宿舎を巣立った子ども達の多くは、自らもまた福音の光を伝えるものとして、世界へと旅だってゆくこととなります。両親と離れて暮らさなければならないその満たされない思いは、星の光に照らされて、やがてそれぞれの使命へと変えられることとなったのでした。

 ヘルンフートの星を眺めると、四方八方に突き出している突起のどれか一つは、自分自身に向かっているように見えます。それは、救い主によってもたらされた「福音(良い知らせ)の光」は、今この星を見つめる自分自身にもまた向けられている、ということを気づかせることになります。

環八側歩道より見た教会玄関のヘルンフートのクリスマスの星

 

礼拝堂入り口のヘルンフートのクリスマスの星